Tiだけではダメ?なぜTi-Bを使うのか.結晶粒微細化の仕組みを解説
アルミ鋳造では結晶粒を微細化(=結晶核を多数化)するために、Al-Ti-B(チタンボロン)系の微細化材が広く使用されています.
しかし現場では、こんな経験をしたことがないでしょうか.
・Tiが添加されたインゴットを使用したけど効果が感じられなかった
・同じはずの5Ti-1Bなのにメーカーによって効きが違うことがある
・長時間保持すると効果が落ちる
・残湯操業ではまったく効かない
・熱分析で調べると初晶過冷却があまり改善しない微細化材がある
一見すると不思議な現象ですが、これらはすべて同じ本質につながっています.
それは、TiやBの添加量そのものではなく、有効な核生成サイトがどれだけ存在しているか、どれだけ残っているかが重要だからです
結晶粒微細化の目的
アルミが凝固するとき、発生した結晶核から結晶が成長していきます.核が少なければ、ひとつひとつの結晶は大きく成長し粗い組織になります.逆に結晶核が多ければ、多数の結晶が同時に成長するため、結晶粒は細かくなります.また凝固挙動が安定します.
結晶粒が微細になると、
・強度向上
・延性向上
・熱間割れ低減
・組織均一化
・引け巣減少〜消滅
その他 凝固挙動が安定するため
・湯周り不良の減少〜消滅
・二枚皮や湯じわ肉欠け、エッジの丸みの減少〜消滅
などが期待できます.
そのため鋳造では、「核生成サイトを増やすこと」が重要になります.
Tiだけじゃダメ?
Ti単独添加でも微細化はできなくはないですが、その前に.まず誤解されがちですが、溶存Tiが直接に結晶核になるわけではありません.Tiをアルミ溶湯に添加すると、溶湯中にAl₃Ti(チタン化アルミニウム)が形成されます.このAl₃Tiは凝固時にアルミ結晶が発生する足場(核生成サイト)となり、微細化に寄与します.
しかし実用上はいくつかの問題があります.
Al₃Tiは、
・粗大化しやすい
・沈降しやすい
・保持中に再溶解する
という特徴があります.
最大の問題は、十分な数の核を作りにくいことです.Al₃Tiは比較的大きな粒子として存在するため、微細な核を大量にまんべんなく分散させることが苦手です.さらに十分な微細化効果を得るには比較的多くのTiが必要になります.
結果として、
・条件によって効果が不安定
・フェーディングしやすい
・過剰添加で脆化やスラッジ化を招く
という欠点があります.
Tiを過剰に添加すると粗大なAl₃Tiが生成し、
・延性低下
・疲労強度低下
・工具摩耗増加
・スラッジ増加
などの原因になることがあります.
つまり、Ti単独は「効かなくはないが、扱いが難しい微細化材」です
Al-Ti-Bは何が良いのか
Ti-B微細化材では、TiB₂(二ホウ化チタン)粒子が利用されます.TiB₂は融点約3225℃(文献値)の非常に安定な化合物です.アルミ溶湯温度では熔解しません.
そのため、
・微細粒子を大量に供給できる
・再熔解せず消失しにくい
・少量添加で高い効果が得られる
という利点があります.
ここで誤解されやすい点があります.
Ti-B添加材はTiとBをばらばらに溶湯へ供給して、炉の中で化合させてTiB₂を作っているわけではありません.当社の販売する高品位なTi-Bは製造段階でTiB₂を形成し、それをアルミ母合金中に分散させています.
つまり、当社のTi-Bスティック(ロッド)を添加すると、既に添加材中に存在しているTiB₂粒子が溶湯中へ供給されることになります.TiB₂粒子が、アルミ結晶が発生する足場(核生成サイト)になります
なぜ5Ti-1Bは、5w%対1w%なのか
なぜ5Ti-1Bは、Ti(チタン)とB(ホウ素)が5対1なのか.ここにTiB₂だけではない微細化の秘密があります.実はTiB₂粒子だけでは不十分なんです
(次回へ続く)